前回のコラムで、グリーフ(悲嘆) とは、喪失に対する感情上の反応であり、様々な喪失があると書きました。その中で、近しい人との死別を経験した時、何が大事なのでしょうか。
その死について話すことです。
自分の感情に蓋をせずに、どんな感情であれそれを認め、言葉に出すこと。それが一番の癒しにつながります。悲しみ、後悔、孤独感、後悔など、1つではない様々な感情が渦巻いているでしょう。それを信頼できる人に話しましょう。表現することで自分がどういう感情を抱いているのかを認識でき、その感情に対して何ができるかを考えるきっかけとなるからです。
亡くなった人との思い出を振り返ることで、心の平穏がもたらされることもあります。その人はあなたにとってどんな人でしたか?その人の何が恋しいですか?今その人がここにいたら何と言いたいですか?それを表現する過程で、気持ちが乱れたり、涙が出てもいいのです。それはあなたがきちんと悲しんでいる証拠です。
きちんと悲しまずに、無理して前向きになろうとしたり、仕事や予定を入れて毎日を忙しくしようとする人も多いです。しかし、それは気持ちに蓋をすることになり、哀しみや孤立感を気付かぬ内に大きくさせます。結果、後々、心の病(うつなど)という形で表出する可能性もあります。
そして死別によるグリーフは、あなたがずっと付き合っていくものなので、「一定期間きちんと悲しんだからもう終わり」というものでもありません。「悲嘆する自分」と「立ち直ろうとする自分」の二つの間を行ったり来たりしながら、次第に後者の方にいられる時間が長くなっていくのです。
しかし、近しい人の死について、友達や家族に話しづらいと感じる人もいるでしょう。実際、私のカウンセリングの経験でも、「1年経ったら誰も気にかけてくれなくなった」、「皆忙しくて、悲しい話を持ちかけるのが申し訳ない」、「友達はいても心をさらけ出せる人がいない」と言う人が多くいます。あるいは、心の痛みをまた感じたくない、友達に同情されたくないなどの理由から話すのを避ける人もいます。
身近に自分の気持ちを躊躇なく話せる人がいない場合や、グリーフに対処するのが難しいと感じる場合は、1人で切り抜けようとせず、ぜひ第3者のカウンセラーにアクセスしてみて下さい。
カウンセラー 山口 泉 https://www.izumicounselling.com
(参照:Humphrey, G. M., & Zimpfer, D. G. (2007). Counselling for grief and bereavement )
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